知識のしずく「その2」
「学校からいじめをなくすには」
学校から、いじめをなくすためには、知識のしずく「その1」でも、指摘しましたように、子どもを通じたアプローチが一番有効であるように思います。つまり、子どもさんをいじめられない子に育てること、さらには、周りから友達がよってくるような子に育てること、そうして、その子を通じて、いじめをなくすことでしょう。
下で触れますように、熟達した子どもたちは、いじめを未然に防いでしまいます。
あたかも、最初からいじめがなかったかのように、いじめをなくしてしまう。こういう子をできるだけ多く育てていくことが、いじめ対策の本来的、安定的対策であるかと思います。
私自身の経験上、学校の先生などによる、トップダウンの対策よりも、ずっと有効な場合が多いです。
会社などでも、この人が言うと、みんな動くけど、あの人が言ってもだれも動かない、というようなことがありますでしょ。これは、職制とかシステムとかというものとは、おおよそ関係のないもので、個々の人間的なものによるものです。
それは、学校というほとんど子供で構成されるような社会でも、同様のことがいえるといえるでしょう。
その「いじめをなくす能力」は、いわば、「人間関係処理能力」ともいえるものからくるもので、その子がその後の人生を歩む上でも、とても大事な、能力であるといえます。ですから、長い目で見ても、その能力は育てておくに越したことはありません。
勉強できるというのと同じくらい、場合によっては、それ以上に大事な能力といえるかもしれません。
じゃあ、そういう子を育てるには、どうしたらいいか。
私は、ほかでも指摘してきましたように、子育ての基本は、「環境」と「言葉」であるかと思っています。これは、子どもに「人間関係処理能力」を育てる上でも、当てはまります。
子どもの「環境」というと、何もかもそろった、恵まれた環境を想像されるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。むしろ、それとは、正反対に近い概念です。
いわゆる、世間で言う「環境」がハード的なものであるとすると、私の言うのいう「環境」はソフト的なものです。
「環境」とは何か、「言葉」はどうあるべきなのかなど、子育て上の個々の事例は、家庭教師田口の視点(1ページ目)以下の「家庭教師田口の視点」シリーズで、とりあげていますので、それをご参考にしていただければ、と思いますが、そのコツを一言で、表すならば、「ポイントをおさえて、あとはほうっておく」ということにつきます。
ここでも、一例をあげましょう。
私の娘が小さかったころの話です。
娘が、ファミレスで、ソファの上で、突然立ち上がりました。小さな子としては、よくあることですね。で、「だめでしょ」と怒り出す大人がいる、というのも、よく見かける光景ですね。
でも、こういうときこそ、怒らずに、ポイントをおさえたかかわりをされるといいかと思います。
私は、どうしたかと言いますと、「だめでしょ」という代わりに、「A(娘の名)ちゃん、Aちゃんが立っているの、周りの人からどう見られるかな?」と言っただけでした。
そうしたら、娘は、周りを見回したあと、なるほど、と思ったのでしょうね。体をちぢめて、「これでいい?」と聞いてきました。
このときに、「ちゃんと座らなくてはいけません」とか言う人がいるかもしれませんが、そう言わず、「うん、まあ、それだったら、大丈夫かな」と言って、ほうっておきました。
自分で考える余地を与えることが大事ですね。ほんのちょっとのかかわりの工夫です。でも、日々のかかわりの中で、その積み重ねの中で、子どもの成長には、大きな差が出るでしょう。
ポイントさえおさえたら、あとは、自分で、子どもは考えるようになると思います。子どもが考えるべき、領域まで、大人が踏み込んで、説明してしまったりすると、子どもは、思考すべきときに、思考せず、能力が育ちません。
私たちが目指さなければならないのは、たとえば、学校という、親が見守ることのできない世界で、自分で、考えて、適切に行動できる子を育てることなのです。
実際、私の娘は、それ以来、ソファに足を乗せるということを一切しなくなりました。足をソファに乗せて、ちぢこまるというということさえも、、。
自分で考えて、自分の意思で行動をしているものですから、定着がいいです。
で、別のある日、ファミレスで、知らない男の子が通路で走り回っているのを見て、両腕をクロスさせて、あれはだめ、と言っていました。
おそらく、私たちが、それを教えたわけでもなく、自分で考えて、どういうときに、どういう行動をするのがいいか、判断した結果の行動だと思います。
ひとつのことを聞いて、自分で考えて、別のことにも、応用をきかせているわけで、こういう経験をいっぱいすると、子どもは、学校やクラブなどで、自分一人で、判断し、行動しなければならないというときに、適切な判断ができるようになるわけですね。
これは、一例です。先ほど申したように、いろいろな具体例は家庭教師田口の視点(1ページ目)以下の「家庭教師田口の視点」シリーズで、とりあげていますので、それをご参考にしていただければ、と思います。私の本は、その子どもたちへのかかわりを体系化したものです。
ここでは、あまり、事例ばかり挙げると、きりがないので、このあたりで、、。
お金も何もかかりません。あなたが、私のヒントから、そのつど、ほんの少しの機転をきかせて、子どもさんと接することができれば、いじめられない、さらには、いじめを未然に防げる子どもに育てることは可能です。
ちなみに、私の子供たちは、二人とも「友達が周りから寄ってくる」と言っています。おそらく、そのときそのときの判断が、普通の子よりも、適切にでき、行動できるということからくるのだと思います。
実は、私自身、教え子で、「周りから友達が寄ってくる」という子がいて、その子から、いろいろ学びました。今、それを、わが子に伝授しているわけですね。皆さんにも、本やホームページ上などで、折に触れて、具体例を、お示ししているわけです。
私が、知識のしずく「その1」で紹介した、「突然よだれをたらす子」は、その振る舞いが他人から見て、どうなのか、ということを考えずに、行動してしまっているわけで、どういうときに、どういう行動をするのがいいのか、ということを、あまり考えずに、今まで来てしまったということでしょう。
その結果、周りの子から、嫌われ、いじめの対象になってしまったといえるかと思います。
友達が周りから寄ってくるという子どもは、余裕があるものですから、友達からの誘いも、平気で断れますし、いじめられそうになった子を助けて、いじめっ子から嫌われても、全く平気です。強い親友のネットワークを作っているから、そのいじめっ子のほうが孤立する、ということがわかっているのでしょう。
私の娘も、あるいじめっ子から、あからさまにいやな顔をされても、平気だったようです。
いじめを、とめたら、あるとき、「○○(娘の名)ちゃん、大っ嫌い!」と、大声で叫ばれたそうです。
娘は、笑っていたそうです。そのあと、その「いじめっ子」は、周りの子から、無視されだしたらしいです。
私は、娘に「その子と、他の子を区別しないでね。今度は、その子がいじめられるかもしれないから」と伝えました。娘は「わかっている」という感じでした。
で、年賀状が、その子から来たとき、「あたしのこと、嫌いみたいなことをいっていたのに、なぜ送ってくるんだろう?」と、少し笑みをたたえながら、言ってました。余裕を感じませんか?
いじめは、いじめっ子をほうっておくと、ガンのように、増殖したりします。周りの子に伝染したりします。ですから、最初のいじめっ子が出たときに、その場で、いじめ行為をできない雰囲気にもっていけば、いじめはなくなるわけですね。それができるのは、子どもです。
クラスに一人か二人、そういう能力と意識を持っている子がいれば、いじめは防げるのではないか、という気がします。その子は、自分の強固な友達ネットワークを通じて、いじめを、芽の段階で摘み取ってしまいますから、、。
できる子にとって、それは、苦もないことです。
繰り返しますが、いじめをなくすもっとも有効な方法は、子どもを通じたものです。
私自身は、わが子が「いじめが多い」という小中に行ったことを、「いいチャンス」と思っていました。うちの子は、私の期待に応えて、上手にいじめをなくしてくれているように思います。
娘から、先日「パパは、いじめられた子を助けてあげたことないの?」と聞かれました。
私は、「うん、残念ながらないね。僕は、ぼーっとしていたよ。僕の親は、子どもにそういうことを教えることのできる教育者ではなかったからね。君はえらいね」と答えました。
私は、娘に「学校の先生にこっそり、いじめをなくしてあげてね」と伝えています。
いじめは、ガンみたいなものです。
ガンを退治するのは、抗がん剤や外科治療のようなものよりも、免疫細胞が活性化することによって、のほうが、副作用がすくなくてすむことでしょう。
いじめを未然に防いでしまう子は、いわば、免疫細胞みたいなものと考えれば、その有効性のイメージがわきやすいでしょうか?
皆様の何らかのご参考になれば、、。
2012年3月11日記す
いじめられないために。いじめをなくすために。知識のしずく「その1」
学校からいじめをなくすには。知識のしずく「その2」
変質者によって、子どもが殺されないために。知識のしずく「その3」
兄弟姉妹げんかをなくす方法。知識のしずく「その4」
「勉強しろと言わないように」ということに関して。知識のしずく「その5}
「選挙制度、政治制度の改革」に関して。知識のしずく「その6」
政治への向き合い方について。知識のしずく「その7}
大学入試改革の問題点について。知識のしずく「その8」
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